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体内時計タンパク質BMAL1が炎症を促進する新たな機構を解明 ペルオキシソーム酵素MFP2の核内移行が炎症を促進、新たな治療標的として期待

【ポイント】

・マクロファージ(※1)の炎症反応を制御する体内時計(※2)タンパク質BMAL1の詳細な作用機序は不明でした。

・BMAL1がペルオキシソーム(※3)の脂肪酸分解酵素MFP2(※4)を細胞核内に輸送し、核内アセチルCoA量の制御を介して炎症の促進因子であるNF-κB(※5)を活性化することを世界で初めて発見しました。

・核内MFP2の蓄積量は朝と夜で変動し(概日リズム)、マクロファージ選択的にBMAL1を欠損させたマウスでは化学発がん物質による慢性炎症と腫瘍形成が抑制されました。核内MFP2を標的とした創薬が、慢性炎症やがんの新たな治療法につながることが期待されます。

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【概要】

私たちの体には「体内時計」と呼ばれる約24時間周期のリズムが備わっており、免疫細胞であるマクロファージの炎症機能もこの体内時計によって昼夜で変化します。体内時計の中心的な役割を担うタンパク質BMAL1はマクロファージの炎症を促進・抑制の両方に制御することが知られていましたが、特に促進に関わる分子レベルのメカニズムについては、これまで明らかになっていませんでした。

 九州大学大学院薬学研究院の鶴田朗人講師、松永直哉教授、小柳悟教授(未来社会デザイン統括本部 医療・健康ユニットリーダー)、大戸茂弘特命教授らの研究グループは、BMAL1が本来はペルオキシソームに存在する脂肪酸分解酵素MFP2と結合し、これを細胞核の中へ運び込むことを発見しました(図1参照)。核内に移行したMFP2は「アセチルCoA」を産生し、このアセチルCoAが炎症遺伝子の「スイッチ役」である転写因子NF-κBを活性化することで、マクロファージを炎症促進型(M1型)へと誘導します。さらに、核内MFP2の量はBMAL1に依存した概日リズムを示し、マウス肝臓において核内BMAL1が多い時間帯に核内MFP2も増加することが分かりました。マクロファージ選択的BMAL1欠損マウスでは、これらの炎症促進メカニズムが抑制されるため、化学発がん物質による肝臓の炎症および慢性炎症に伴う腫瘍増殖が有意に抑制されました。

 本研究成果は「体内時計–脂肪酸代謝–炎症・がん」を結ぶ新しい分子回路を明らかにしたものであり、核内MFP2を標的とした炎症性疾患やがんへの新規治療戦略の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は国際科学雑誌「Cell Reports」に2026年6月9日(火)(現地時間)に掲載されました。
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【用語解説】

(※1)マクロファージ
 白血球の一種で、病原体・異物・死細胞を取り込んで消化(貪食)する免疫細胞。炎症を促進するM1型と、組織修復・抗炎症を担うM2型に大別される。炎症部位や腫瘍組織に多く集まり、免疫応答の中心的役割を果たす。

(※2)体内時計(概日時計)
 地球の自転(約24時間)に合わせて体の機能にリズムを刻む仕組み。睡眠・覚醒サイクル、ホルモン分泌、免疫機能などを約24時間周期で調節する。Clock・Bmal1・Period(Per)・Cryptochrome(Cry)などの「時計遺伝子」が相互に制御し合うフィードバックループで維持される。BMAL1はその中核タンパク質の一つ。

(※3)ペルオキシソーム
 細胞内に存在する小胞状の細胞小器官。炭素数22以上の超長鎖脂肪酸、分枝鎖脂肪酸、胆汁酸前駆体などを脂肪酸β酸化によって分解する。ミトコンドリアとは異なる基質を担当しており、両者が協調して脂質代謝を支えている。

(※4)MFP2(Multi-functional protein 2)
 HSD17B4遺伝子がコードするペルオキシソームの脂肪酸分解酵素。エノイルCoAヒドラターゼ活性とD-3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ活性の2つの酵素機能を持ち、ペルオキシソームβ酸化の第2・第3ステップを担う。最終産物としてアセチルCoAを生成する。本研究で、細胞核内にも局在して核内アセチルCoAを産生することが初めて明らかになった。

(※5)NF-κB
 炎症・免疫応答を制御する主要な転写因子。炎症性サイトカイン・ケモカイン・接着分子などの遺伝子発現を活性化する。p65リジン310番のアセチル化が転写活性を高めることが知られており、今回の研究で核内MFP2産生のアセチルCoAがこのアセチル化を促進することが明らかになった。

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関連リンク
図1:BMAL1による炎症促進機構 体内時計タンパク質BMAL1がペルオキシソーム酵素であるMFP2を細胞核内に輸送し、そこで産生されるアセチルCoAがNF-κBの活性化を介してマクロファージの炎症を促進することを発見しました。