2019年6月に開催された大阪G20サミットにおいて、2050年までに追加的な海洋プラスチック汚染をゼロにまで削減する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提案されました。しかし、これを実現するため、どの程度までプラスチックごみ量の海洋流出を削減すべきか、これまで具体的な数値目標は明らかではありませんでした。
本研究は、世界で初めて、海洋流出するプラスチックごみの削減数値目標を提案するものです。本研究では、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの実現のため、2035年までには、世界平均で2019年の年間流出量の32%を重量ベースで削減する必要があると推定しました。
九州大学 応用力学研究所の樋口千紗 学術研究員と磯辺篤彦 教授(環境・食料ユニット ユニットサブリーダー)
は、極海を除く全世界の表層海洋を対象として、世界の河川から流出したプラスチックごみの行方を追跡するコンピュータ・シミュレーションを行いました。ここでは、海洋に浮遊するプラスチックごみと海岸に漂着するプラスチックごみ、そしてこれらが破砕してできた浮遊マイクロプラスチックと、海岸漂着マイクロプラスチックを対象としています。コンピュータ・シミュレーションの結果を解析することで、世界の各河川から流出し、世界の海域や海岸へ到達する、プラスチックごみやマイクロプラスチックの重量を求める確率分布モデルを作成しました。このモデルを利用することで、異なる流出シナリオに対応する海洋や海岸でのプラスチックごみ重量や、マイクロプラスチックごみ重量の将来予測が可能となりました。
本研究によって初めて、海洋プラスチック汚染を防ぐため社会が取り組むべき施策に目標値が設定されたと言えます。使い捨てプラスチックごみの使用制限や、廃棄量の削減、リサイクル率の向上、あるいは軽量素材開発に向けたイノベーションなど、有効な対策の組み合わせによって、この32%削減目標を達成することが期待されます。
本研究成果はエルゼビア出版のMarine Pollution Bulletin誌にて2024年8月9日にオンライン・リリースされました。
海洋プラスチック汚染の進行を防ぐ流出プラスチックの削減目標を提案
2024.08.09
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